玉手箱?

 なにをどうしていいかわからない。自分の目の前には、暗黒の魔物が、パックリと口を開けてこちらを見据えているような感じがして、不覚にも鳥肌が立ってしまった。

 シコシコと少ない小遣い貯め続け、やっと手にしたノートパソコン。其の名もMebius。金を惜しんだのが悪かったのか。DSTN液晶の画面には虹模様が出るだけで、キーボードを打っても何にも手ごたえがない。電源を切るのがよいか、切らぬ方が。あぁ・・・・・・。迷いに迷った。

 なにがどうなったのが。何が原因か。まったくわからない。「あぁ、神様。私が何をしたというのでしょうか。神社にオシッコをかけたこともないのに。ただお風呂でオナラをしただけなのに。どうして、こんな仕打ちを受けねばならないのでしょうか。もう二度とお風呂でオナラをいたしません。」と誓約したときであった。突然虹が画面上に移動し、Windowsデスクトップが見えた。

 「ヤッタ。これで電源が切れる。ヤッパリ、お風呂のオナラがいけなかったのだ。」と喜びと後悔が同時に込み上げてきた。

 喜んでいる場合ではない。まだ完全ではないのだ。どうしよう。もう一度スイッチを入れるか。それともこのまま修理にだすか。どうしてこんなに人生には迷いがあるのか。別れ道だらけの人生だ。愚痴をいっても仕方がない。このまま修理だ。決断した。

 購入した店に電話をいれ、事情説明すると、店に持って来いという。修理センターではないのかと、問い合わせたが、店にこいという。大事にクッションでつつみ、店に持ち込んだ。電源をいれ、表示して見せた。先程の虹の現象よ、再現してくれ!と祈りながら・・・・・。

 神様は正直者の味方だ。ちゃーんと願いを聞き入れて、虹模様を再現してくれた。こういうときは喜ぶべきなのか。

 「こんなんですョ」と得意げな私。威張ってもみてもしようがない。「エーッ1!こんなの見たことがない。」店員のびっくりした顔、顔、顔。

 「買ったのが去年の年末で、今日が1月20日。こんなんで壊れるんかい。」と息巻いてみせた。妙だが、変に偉くなった気分だ。「もちろん、保証期限内ですから、修理費は無料で行います。」と殊勝だ。ところが、「この場合の修理は出張修理になります」という。「もちろん、出張費は要りません」という。

 「ま、タダならいいか。」と納得し、家に持ち帰った。しばらくすると、修理センターから電話がきた。「修理センターに持って来い」という。怒った。完全に怒った。「店に来いと言うから、店に行った。出張修理だと言うので、持ち帰った。こんどは修理センターに持ちこめだと。遊んでるんじゃあねェや。」なぜかこういうときは江戸っ子になる。不思議なものだ。しかし、慣れない江戸っ子になった甲斐があった。「店から取りに行かせる」という。「なら、いいか。」すぐに矛先を収めてしまう。ここが俄江戸っ子だ。

 半時もせぬうち(約1時間)先程の大仰に驚いた店員がバイクに乗ってやって来た。「ええ加減にしてャ」となぜか今度は関西弁。東へ行ったり西へ行ったり、忙しいものだ。考えて見れば九州生まれの京都育ち。しばらく茨城にいたせいか、つぶやきシローの口調も時々出る。国内版、多国籍人間だ(ん?)。グローバルピープルインジャパンか?

 そんなことはどうでもいい。肝心の修理だ。2週間ほどで、修理が上ったから取りにこいという。「普通ならもってくるのが普通だろう」とわけのわからぬ言葉を頭の中で繰り返しつつもとりにいった。早速持ち帰り、スイッチをいれた。感激!ちゃんとWindowsが立ち上がった。当たり前だ。何のための修理だ。何のために修理センターがあるのか。などと、訳のわからぬことを自問自答しながらも、御機嫌な自分が悲しい。

 しかし、そんな上機嫌も吹き飛んだ。保証期間が3カ月になっている。買ったとき(12月23日)の保証期間が1年間、修理に出したのが1月20日で保証期間が3カ月。頭の中が、大混乱。引き算ができない。えーっと、えーっと・・・・・・よくわからないが、迷惑を受けたうえに保証期間が大幅に短くなっている。「何なんだ、こりゃ」

 我が愛機Mebiusはそれからも時々白っぽくなってマウスポインタが全く見えないときがある、気まぐれ天使だけど、それ以外は私の言うことをよく聞いてくれる。当たり前か。しかし、考えてみれば、何度Windowsの再インストールをしたことか。3度や4度ではない。Windowsの再インストールだけはベテランだ。

 人生何事も経験だ。経験の積み重ねが、人生を濃くする。いってみれば、コーヒーのコーヒー豆みたいなものだ。コーヒー豆のないコーヒーなんて・・・・・・

初めてコンピュータなるものを意識したのは昭和47年ごろであったと思う。オリベッティの卓上計算機(電卓ではない。今のPCぐらいの大きさ)が会社にはいってきたときであった。それまでの技術計算はソロバン、ガチャピン(手回し型の計算機)や計算尺でするしかなく大変な労力であったことは経験して来たものしかわかるまい。

 自慢じゃァねェが、ソロバンでルート計算なんてやった事あるかい。ねェだろう。な、こういうのも経験だ。(しかし今では使い道がない。)