瞬間冷凍器

 フリーズという言葉を聞いたことがあるだろう。フリーズとは凍りつく事である。凍りつくといっても、なにも冷凍庫でCDやらフロッピーやらPCを凍らせることではない。PCが凍りついたように、動かないことをいう。動かないといっても、デスクに張付いたわけではない。要するに、マウスやらキーボードからの指示にたいして、なんの応答もないことをいう。

 ワープロでも、表計算でも、ゲームでもなんでもよいが、今の今まで快調に動いていたソフトがある動作をきっかけにさっぱり応答をしなくなる。こんな状態をフリーズとよんでいる。なにがフリーズだ。なにが凍りつくだ。応答しなくなったPCを操作していたこちとらが凍りつく。だから「フリーズとはPCが凍りつくことではなく、操作している人間が凍りつくことを指す」といっても過言ではではない。

 察しのいい読者ならもうお解りだろうと思うが、グレー人の間ではよくフリーズするソフトをフリーザー(冷凍庫)と呼ぶ。だから、フリーザーは家電メーカだけが作っていると思ったら大間違い。実はソフトメーカでも製造していたわけだ。それにこのフリーザーの性能ときたら、家電メーカの及ぶところではない。なにせ、瞬間である。どんなに優秀な冷凍庫でも、人間一人を凍らせるには瞬間というわけにはいかないが、ソフトメーカの製造するフリーザーは瞬間である。

 ソフトメーカの作るフリーザーはだから、瞬間冷凍器と呼ぶべき優秀なものである。だから、ソフトメーカを恨んではいけない。こんなに優秀な瞬間冷凍器を、アプリケーションの付録として、サービスとしてオマケとして提供してくれたものである。しかし、この冷凍器の作り出す涼しさは、並大抵のものではない。凍りついてるはずなのに、なぜか汗が出る。やたらとあつくなる。そしてあつくなるのになぜか、冷たい汗が出る。

 「人間を瞬間に凍らせるのに、人間にとってはあつくなり、あついのに冷たい汗が出るものなーんだ」。こんなナゾナゾ、誰が解ける。

 フリーズしている間、本当に全くPCは応答をしてくれない。どんなに、泣こうが叫ぼうが、そんなことでは許してくれい。情け無用の世界なのだ。そこで、初心者はあわてて電源を切る。しかし、前にも書いたように急いで電源を切ってはいけない。どんなに急いでも、人間の動作では0.何秒か掛かる。100MHzの486CPUで考えても、1秒間に100,000,000個(1億回)の命令をこなしているのだ。ということは0.1秒でも10,000,000回の命令をこなしている。

 だからどんなに急いでも間に合わない。間に合わなければゆっくりやっても結果は同じだ。まずハードディスクやフロッピーディスクやCDドライブが動作していないことを確かめよう。まず動作していないはずだ。動作していないことを確認したら、南無阿弥陀仏と呪文を唱え、おもむろに電源スイッチに手を伸ばす。電源スイッチに手が掛かったら、次の呪文を唱えて、スイッチを切ろう。「クソッタレー」。アァ、私としたことがはしたない。このことは忘れてくれ。

 忘れてくれと言う前に、死ねよといってなぜくれぬ。なんて歌ってる余裕はないはずだ。再度、PCを立ち上げなおさねばならない。普通の機械なら、故障が発生したのだから、同じ減少を発生するはずだ。しかしPCという魔物、そんな常識は通用しない。再度同じソフトを使用しても、フリーズしないことが多い。なぜだ。なぜなんだ、と疑問に思っちゃいけない。

 こんな疑問を簡単に解けるほど、この世界は甘くはない。しかし教えてあげよう。早うせんかいと、急いてはいけない。急いてはことを仕損じる。急がば回れ。押さば引け。引かば回れ。回れば押せ。の、極意である。そちらが急くほどに、こちらはもってまわる。電源スイッチを入れてから、フリーズするまでの操作を全く同一に再現しなければ、同一の現象は発生しないからである。

 それでも、ハードディスクやフロッピーディスクやメモリの内容はフリーズしたときと全く同じにはならないだろう。要するにフリーズした時を再現することはほとんど不可能なことである。だから全く同じソフトを使用してもフリーズするとは限らないのである。電源スイッチを入れてから、フリーズするまでの作業のパターンを数えてみるとよい。恐らく、答えがでるよりも寿命が尽きるだろう。だから、やめときな、っていってるの。

 フリーズから脱却するのには、電源スイッチを切るよりも、もっといい方法がある。それは先程の呪文を唱えながら、CTRLキーとALTキーとDeleteキーを同時に押すことである。同時に押すといっても、ジャストタイムではない。まずCTRLを押したままにして、ALTキーを押す。この2つのキーを押したままDeleteキーを押す。そうすると、あなたの普段の心掛けにもよるが救われることもある。

 運がよければ、神の使いダイアログ(メッセージボックス)が現れるので、その指示の導くままに身を委ねることである。そしてさらに運がよければWindowsの画面に戻ることができる。その場合、作業途中のデータは消失するが嘆いてはいけない。遭難しかけた太平洋で、救助されたのだから、ポケットに入れておいた財布がなくなっていたとしても嘆かないだろう。

 このことから、いかにPCにとって電源スイッチを切ることが愚かなことであるか、わかるだろう。